2023/08/20 #500 「橘玲『世界はなぜ地獄になるのか』解説、海洋堂「模型で読む世界」、配信500回を振り返る」
『世界はなぜ地獄になるのか』
『世界はなぜ地獄になるのか』は、著者・橘玲さんによる現代社会の炎上やアイデンティティに関する分析を含む本です。この本の中で橘さんは、特にSNSでの炎上や「推し活」といった現象を、心理学や社会学の視点から解説しています。
橘さんは「不道徳な相手に『正義』を振りかざす時、人は怒りと共に大きな快感を得ることができる」と述べ、これがネット炎上の根本原因の1つだとしています。芸能人の不倫や日常的なスキャンダルに対して、人々が熱心に非難する理由は、それが「参加が簡単で無料で、リスクが少ない娯楽」だからだと指摘しています。
さらに、社会がリベラル化しアイデンティティが多様化する中で、誰かとアイデンティティを共有できないと不安を感じる人々が、「アイデンティティ融合」によって自己を集団や推しに重ね合わせる現象についても述べています。この融合は、例えばアイドルへの「推し活」として現れたり、国家や民族へのナショナリズムとして現れたりする、としています。
本書では、現代の「推し活」と「ネトウヨ」などの現象を同じコインの裏表と捉え、それぞれが炎上や攻撃活動に結びつくプロセスを詳細に解説しています。橘さんによると、現代人のアイデンティティ融合は、「推し活」と「叩き活」という形で表れるとされ、それがネット社会の特性を浮き彫りにしています。
本書は「小山田圭吾炎上事件」「ポリコレと言葉遣い」「会田誠キャンセル騒動」といった実際の社会事件を題材にしており、読者に現代社会の複雑さと、個人がその中でどうアイデンティティを形成しているのかを考えさせる内容です。橘玲さんの分析が詰まった本書は、SNS時代の人間関係や社会の本質を理解するために一読の価値があります!
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